父を私の扶養に入れられると知ったのは、世帯分離をしたあとだった。
住民票を分けて、父の施設代は月55,000円下がった。それで終わりのつもりでいた。
そのあと別のことを調べていたら、「世帯を分けると扶養控除が受けられなくなる」と書いてあるページが出てきた。慌てて役所に電話した。返ってきたのは「税金と健康保険は関係ありません」という、あっさりした答え。
父は要介護4で、今は特別養護老人ホームにいる。弟には知的障害がある。ふたりの手続きを、私はひとつずつ調べながらやってきた。世帯を分けたまま父を扶養に入れて、扶養控除と障害者控除、それに医療費控除を申告している。
自分の家でどれくらい税金が減らせるのか、読み終わるころには計算できるようになると思う。
世帯分離しても、父は私の税扶養に入れられた
住民票の世帯と、税金の扶養は、まったく別の物差しで見られている。
役所が世帯分離で見るのは住民票という名簿。税務署が扶養で見るのは、生活費を出しているかどうかという実態のほう。見ているものが違うから、世帯を分けても扶養から外れることはない。
父の生活費は、年金だけでは足りない。足りない分は私が出している。だから扶養に入れられる。
世帯分離そのものについては別の記事に書いた。役所で一度止められた話も、そちらに書いてある。
健康保険の扶養と、税金の扶養は別の話
扶養には2種類ある。健康保険の扶養と、税金の扶養。同じ「扶養」という言葉で説明されているせいで混ざりやすいけれど、中身は別物。
父は75歳を過ぎている。75歳以上の人は後期高齢者医療制度に自分で加入するので、そもそも誰かの健康保険の扶養には入れない。
これが分かったとき、引っかかっていたものが消えた。世帯分離のデメリットとしてよく挙がるのが「親が健康保険の扶養から外れて、国民健康保険料がかかるようになる」という話。父はもともと入っていないから、外れようがない。
世帯分離の記事に「うちではデメリットは特になかった」と書いた。その理由が、これだった。
父を扶養に入れて、私の所得は88万円減った
扶養控除は48万円
70歳以上の親を扶養に入れると、扶養控除は48万円になる。同居していれば58万円。父は施設にいるので48万円のほう。
障害者控除は40万円
父は特別障害者の扱いで、障害者控除は40万円。こちらも同居なら75万円になる。
障害者手帳がなくても、要介護認定を受けていれば対象になることがある。「障害者控除対象者認定書」という紙で、うちには毎年、確定申告の前に役所から送られてくる。
送られてくるかどうかは市町村によって違うと思う。届かないようなら、役所に聞いてみるといいと思う。
合わせて88万円。その分だけ、私の所得が減った計算になる。
戻ってくる金額は人によって違う。所得税の税率が10%の人なら、所得税だけで約8万8千円。住民税のほうにも別に控除があって、そちらでも減る。
父はもともと、弟の扶養に入っていた
その前の年まで、父は弟の扶養に入っていた。
税金が高いほうに付けたほうがいい
扶養控除は、生計をともにしている家族のうち一人しか受けられない。父を弟に付けるか、私に付けるかは選べる。
私のほうがかかる税金が高い。同じ88万円の控除でも、税率の高い人に付けたほうが減る税金は大きくなる。それで2024年分の確定申告のときに、父を弟から私に移した。
外した弟にも、確定申告が必要になった
移せば、弟の側は控除がひとつ減る。その分、弟には納める税金が出た。大きい額ではなかったけれど、そのために弟の確定申告も必要になった。
付け替えるなら、外れる側にも手続きがいる。そこまで頭が回っていなかった。
弟の申告は私がやった。障害年金の申請も私がやったので、書類には慣れていた。
弟自身は、私の扶養には入れていない。入れれば控除は増える。でも弟には自立してほしい。自分で働いて、自分で税金を納めている。そこは崩したくない。
医療費控除に入れたもの
父の医療費は、私の申告にまとめている。生計が一緒なら、家族の分を合わせて申告できる。
入れているのは、病院代、薬代、おむつ代。今は特養の費用の一部も入れている。
特養の請求書に「医療費控除対象額」が書いてある
特養の請求書には、医療費控除の対象になる金額を書いた欄がある。自分で計算しなくていい。そこに書いてある額をそのまま申告している。
施設に入るまで、この欄の存在も知らなかった。
医療費の合計は、多い年で60万円台、少ない年で20万円台だった。10万円を超えた分が控除の対象になるので、どちらの年も申告できた。
多かった年は、父の入院があったのと、おむつを多めに用意していたから。次の年は必要な量が読めるようになって、だいぶ抑えられた。最初は買いすぎる。
医療費でいちばん大きかったのは、おむつ代だった
証明書がないと、おむつ代は入れられない
おむつ代を医療費控除に入れるには「おむつ使用証明書」という紙がいる。お医者さんが書くもの。
1年目は病院に申請して出してもらった。書類代を払った記憶がある。
2年目、役所に断られて病院に聞いた
2年目は、役所でももらえると書いてあった。要介護認定のときの主治医意見書を市が確認して、証明書の代わりになる書類を出してくれる仕組み。
役所に電話して聞いてみたら、「対象になりません」と言われた。理由はよく分からなかった。
その電話で「病院に聞いてみていいですか」とだけ伝えて、そのまま病院に電話した。そうしたら、すぐにもらえた。
どちらも電話だけで済んだ。窓口に行く必要はなかった。
あとで調べたら、市が出せる条件は細かく決まっていた。主治医意見書の記入日がその年と合っているか、寝たきりの度合いがどう書かれているか。どれかが合わなかったんだと思う。
役所で断られても、そこで終わりじゃない。病院にも聞いてみてほしい。
商品券でもらった分は入れられない
在宅で介護していたころ、市からおむつの助成があった。月5,000円分の商品券。
商品券で買った分は、自分のお金を出していないので医療費控除には入れられない。買い足した分だけが対象になる。
ただ、商品券と自分のお金を合わせて払った回は、レシートを分けてもらえなかった。その分は申告していない。会計を分けておけばよかったと思う。
申告はe-Taxで、夫に手伝ってもらった
パソコンでe-Taxを使った。画面の指示どおりに進めていくだけ。夫が横で手伝ってくれた。
レシートは1年分ためておいて、e-Taxの入力シートにまとめて打ち込む。ドラッグストアで買ったものはレシート、ネットで定期購入しているものは、1年分の領収書を自宅でまとめて印刷した。
領収書は提出しなくていいけれど、5年間は保管しておく必要がある。申告書と一緒にしまってある。
初年度は確定申告で扶養に入れた。次の年からは、扶養控除は会社の年末調整の紙にも書いている。年末調整の紙は、調べながら書けばすぐ書ける。
それでも確定申告は毎年している。障害者控除の認定書が届くのは年末調整のあと。医療費控除も年末調整ではできない。結局、確定申告で全部まとめることになる。
扶養に入れて、ふるさと納税をやりすぎた
失敗もあった。
父を扶養に入れると、所得が減る。所得が減ると、ふるさと納税で寄付できる上限額も下がる。
ふるさと納税は、その年のうちに寄付してしまう。寄付した時点では、父を扶養に入れることなんて考えていなかった。
上限を超えた分は控除されないので、そのまま自己負担になる。
年の途中で「扶養に入れよう」と決めているなら、ふるさと納税の上限を計算し直したほうがいい。うちは順番が逆だったので、どうしようもなかった。
早く知りたかった。でも、あの頃はそれどころじゃなかった
母が亡くなって、その翌月に父が脳梗塞になった。
制度を調べる余裕なんて、まったくなかった。扶養のことを知ったのも、世帯分離のことを知ったのも、ずいぶん経ってから。
もっと早く知っていたら、戻ってきたお金はもっとあったと思う。でも、あの時期はそういう時期だった。
介護のお金は、こちらから動かないと戻ってこない。施設代は世帯分離で月55,000円下がったし、高額介護サービス費も一度申請したら毎月戻ってくるようになった。負担限度額認定証も同じ。どれも、申請した人にしか届かない。
一つずつでいい。うちも一つずつだった。
読んでくれた人の家で、使える制度が一つでも見つかったら嬉しい。


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