特養に申込書を出しに行った日、施設の人に言われた。
「負担限度額認定証、取ってくださいね」
聞いたことのない名前だった。
その紙で、父の施設代は月55,000円安くなった。年にすると66万。
やったことは、市役所に申請書を出しただけ。お金もかからなかった。
ただ、すんなり通ったわけじゃない。条件が「本人の収入」じゃなくて「世帯全員」で、うちは一度そこでつまずいた。
「限度額」という言葉には、覚えがあった。
母の入院のとき、一度は通って、一度は断られた「限度額」
母がまだ生きていた頃、入院したときに「限度額」の申請をしたことがある。あれは病院に出す「限度額適用認定証」。医療保険のほうの、名前がそっくりの別制度。でも「世帯が課税かどうか」で決まるところは同じだった。
そのときは妹夫婦が教えてくれた。ふたりともケアマネだから、こういう制度を知っていた。申請したら、通った。
ところが母の2回目の入院のとき、同じように申請したら、もらえなかった。窓口で聞くと「課税世帯なので」と言われた。
意味が分からなかった。母の状況は何も変わっていないのに、なぜ?
窓口で説明されても、正直よく分からない。分からないまま、何年もたった。
条件は「本人」じゃなくて「世帯全員」だった
父の特養の申込みで「負担限度額認定証」と言われて、今度は自分で調べた。そして、やっと母のときの謎が解けた。
この制度、本人の収入だけで決まるんじゃない。同じ世帯の全員が住民税非課税であることが条件だった(配偶者は別世帯でも見られる。預貯金の基準もある)。
弟がバイトから就職して、「課税世帯」になっていた
うちは母(当時)も父も、弟と同じ世帯だった。
母の1回目の入院のとき、弟は決まった仕事がなく、警備のバイトをしていた。仕事がある時とない時があって、時間もバラバラ。つまり世帯は非課税で、だから通った。
2回目のとき、弟は就職していた。弟が働いて税金を納めるようになった——それで世帯が「課税世帯」になり、母の申請は通らなくなっていた。
窓口の「課税世帯なので」の一言は、そういう意味だった。あの時そう説明してくれれば、と今でも思う。
うちがやったこと:父と弟の世帯分離
仕組みが分かれば、やることは見えた。父と弟の世帯を分ける「世帯分離」の手続き。
うちの場合、父の年金と弟の収入はもともと完全に別会計。実態どおりの届け出だった。窓口で理由を細かく聞かれるかと身構えて行ったけど、何も聞かれず、手続きはあっさり終わった。
父の申請でやったこと——実際の流れ
市役所で用紙をもらって、必要な物をその場で聞く
- 市役所の介護保険の窓口で申請用紙をもらう
- その場で「何を持ってくればいいか」を聞く
- 後日、書類を持って提出
父の通帳のコピーが必要だったけど、コピーは市役所の窓口で取ってくれた。原本を持って行けば大丈夫だった。
認定証が届くまで約1ヶ月。でも「申請した月」から効く
認定証が届くまで、うちは1ヶ月くらいかかった。入居に間に合わないかと思ったけど、施設の人が言ってくれた。
「申請さえ出してもらえれば、認定証が月末までに届かなくても大丈夫ですよ」
認定は申請した月の1日にさかのぼって適用されるから、施設も請求を待ってくれた。ありがたかった。ただ、施設の対応にもよると思うので、申請は早めに動くに越したことはない。
認定証は毎年出し直す。似た名前の「負担割合証」がまぎらわしい
もうひとつ、やってみて分かったことがある。負担限度額認定証は、一度もらって終わりじゃない。1年で期限が切れるので、毎年出し直す。うちは更新のお知らせが届いたら、すぐ書類を出すようにしている。
そして介護保険には、「負担割合証」という名前がそっくりの別の紙がある。役割はまったく違う。
- 負担割合証…自己負担が1割か2割かを示す紙。市役所から自動で送られてくる(手続きはいらない)
- 負担限度額認定証…食費や部屋代を安くする紙。家族が申請しないともらえない
中身が違うのは分かっている。それでも、名前が似すぎていて、書類が届くたびに一瞬「ん?どっちだっけ」となる。この”名前の紛らわしさ”が、地味にやっかい。自動で届く負担割合証を見て「来た」と思い込むと、自分で申請する負担限度額のほうを、うっかり忘れてしまいかねない。
ちなみに世帯分離をして、今のところ困ったことは何もない。父の書類は市役所に頼んで、実家ではなく私の家に届くようにしてある。書類を1枚書くだけで変えられて、受け取りのミスが減る。地味だけど、やっておいてよかった。
いくら安くなった?うちの場合
父は「第3段階の1」で認定された。
- 認定なしだったら(負担割合1割):月147,000円
- 認定後、施設に払う額:月92,000円
その差、月に55,000円。年間なら約66万円。これに医療費や散髪代などが少し乗るので、実際の支払いは月98,000円〜10万円前後になっている。
父の年金だけでは、施設の費用に届かない。届かない分をどうするかは、そのまま私の家計の話になる。認定後の今でも毎月2万円ほどは私が足しているけれど、もし認定なしのままだったら、その負担はもっと重くのしかかっていた。
特養の毎月の費用そのものの内訳は、実際の請求書をもとに特養の費用・料金は実際いくら?月10万円弱の内訳にまとめた。合わせて読んでみてほしい。
金額は施設のタイプや段階で変わるので、正確なところは施設か市役所で確認してほしい。
市役所は教えてくれない
母のとき、教えてくれたのはケアマネの妹夫婦だった。父のとき、教えてくれたのは施設の人だった。市役所から「こういう制度がありますよ」と案内が来たことは、一度もない。
知っているかいないかで、月に数万円。年間なら数十万円変わる。それなのに、窓口で聞いても説明はよく分からない。
親の施設や入院のお金が重いと感じたら、「負担限度額」という言葉だけ覚えて、施設の人かケアマネさんに聞いてみてほしい。窓口より、ずっと分かりやすく教えてくれると思う。
施設のタイプごとの違いで迷っているなら、特養・老健・介護医療院の違いもまとめてある。これから施設を探す段階なら、費用のことも含めて相談できるところから始めると楽です。


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