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施設の職員さんは、私が知らない間も父のことを見ていてくれた。

施設選び・施設での暮らし

父が特養に入居してから、面会のたびに部屋の中をぐるっと見回すようになった。

何かが変わっていないか、確認するように。

ベッドが、壁から離れていた

入居したとき、ベッドは壁にくっついていた。そのほうが落ち着くかなと思っていたし、特に何も言われなかったので、そのままにしていた。

ある日面会に行くと、ベッドが部屋の真ん中に移動していた。

「あれ、なんで動いてるんだろう」

職員さんに聞いてみると、少し申し訳なさそうに教えてくれた。

内出血の跡があったから、職員会議で話し合った

父は皮膚が弱い。かくだけで内出血ができてしまうくらい。

父はテレビを見るとき、いつも同じ体勢で寝ている。ずっと同じ側を下にしているから、圧迫されて内出血ができていたらしい。それで職員会議を開いて、適宜体の向きを変えるようにした。ベッドを壁から離したのも、動きやすくするためだと言う。

自分では気づかなかったことを、毎日見ている職員さんが気づいてくれていた。

内出血した部分には、薬を塗ってケアしてくれているとも聞いた。頻繁に。

今度はベッドの横に、マットレスが置いてあった

先週、面会に行くとまた変化があった。

ベッドの横の床に、マットレスが一枚置いてある。

「これ、なんですか?」

夜中に、迷惑をかけているんじゃないか

職員さんが教えてくれた。

夜間は職員が一人になる時間がある。父のベッドにはセンサーマットが敷いてあって、起き上がろうとすると音が鳴る仕組みになっている。でも、すぐに駆けつけられないときもある。そのとき、万が一ベッドから落ちても怪我をしないように、マットレスを置いているのだと。

話を聞きながら、頭の中でいろんなことが混ざった。

父は夜中に起き上がろうとしているのか。センサーが鳴るたびに、職員さんを困らせているのか。迷惑をかけているんじゃないか。

そういう不安が、じわっと広がった。

センサーが鳴っても、すぐに行けないときがある

職員さんは正直に話してくれた。夜間の体制のこと、一人でいくつもの部屋を見ていること、それでも少しでも安全に過ごしてもらえるように考えていること。

マットレスは、その「考え」の結果だった。

父がひとりで夜中に起き上がろうとしているとき、誰かがそのことを想定して、床に一枚敷いてくれていた。

申し訳ないより先に、ありがたいが来ればいいのに

施設に入れたことへの罪悪感は、まだ消えていない。

こんなに手をかけてもらっているのに、「ありがとうございます」より先に「申し訳ないです」が出てくる。預けておいて、さらに迷惑をかけていると思うと、どう感じればいいのかわからなくなる。

でも同時に、こうも思う。

自分が在宅で介護していたとき、夜中の父のことをここまで考えられていただろうか。

ベッドの位置まで気にして、床にマットレスを敷いて、内出血のあとに薬を塗って。毎日、ずっと。

施設に預けたことは、逃げじゃなかったのかもしれない。そう思える瞬間が、面会のたびに少しずつ増えている。

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