父が特別養護老人ホーム(特養)に入居して、はじめての請求書が届いたとき、私は少しだけ安心した。
「あ、パンフレットに書いてあった金額と同じくらいだ」と。
でも、毎月請求書を受け取るうちに気づいたことがある。「パンフレットより高い月」があった。
なぜなのか。実際にかかった費用の内訳はどうなっているのか。年金で足りるのか。
この記事では、父が特養に入居してからの実際の費用を、できるだけ正直に書いていく。
「施設に入れるといくらかかるんだろう」と調べているあなたの参考になれば嬉しい。
特養を選ぶまでの経緯は、「介護施設の種類が多くてわからなかった。お金がない中で特養を選ぶまでに調べたこと」に書いています。
うちの父の場合:月額の基本費用は約98,000円
第3段階の1に該当することで、費用が抑えられた
特養の費用は、「利用者負担段階」というもので決まる。本人の所得・資産や、世帯の課税状況によって4段階に分かれていて、段階が低いほど居住費と食費が安くなる仕組みだ。
父の場合、第3段階の1に該当した。
これには「世帯分離」という手続きが大きく関わっている。父と弟は同じ住所に住んでいたけれど、世帯分離をすることで、父の年金収入だけで段階が判定されることになった。
負担限度額認定証を取ることが前提
第3段階の費用で入居するためには、「介護保険負担限度額認定証」を市区町村に申請して取得する必要がある。
この認定証があることで、居住費と食費が軽減された金額で請求される仕組みだ。
注意点は、この認定証は毎年更新が必要だということ。市区町村からお知らせが届くと聞いているので、案内が来たら早めに動くといいと思う。
特養の費用を考えるとき、この2つ——世帯分離と負担限度額認定証——はセットで把握しておいてほしい。
パンフレットより高い月があった理由
パンフレットは30日計算。31日ある月は1日分多く請求される
入居前にもらったパンフレットには、月額の目安が書いてあった。
はじめの数ヶ月は「パンフレット通りだな」と思っていたのに、ある月は少し高かった。
「あれ?」と思って施設に確認したら、教えてもらった。
パンフレットの金額は30日計算が基本になっている。
だから31日ある月は、1日分の介護サービス費・居住費・食費がプラスになる。たった1日の差でも、合計すると数千円変わることがある。
「なんで先月より高いんだろう?」と思ったら、まずカレンダーを見てほしい。31日の月かどうかで、説明がつくことが多い。
毎月プラスされる費用の内訳
テレビの持ち込みで毎月2,000円超の費用がかかる
父の施設では、電化製品を持ち込むと1点につき1日70円の電気代が請求された。ただしこれは施設によって異なり、費用がかからない施設もある。入居前に必ず確認しておくといい。
父の部屋にはテレビを持っていった。30日の月なら2,100円、31日なら2,170円。毎月かかることを忘れずに計算しておいてほしい。
なお、電化製品持ち込みの費用については、入居前の説明でしっかり案内してもらえた。入居の際は説明をよく聞いて、費用に組み込んでおくといい。
理容代・お茶代・日用品のリアルな金額
毎月プラスされる費用として、以下がある。
- 理容代:2,100円(施設の理美容サービス)
- お茶代:300円(おやつの時間のお茶代)
ひげ剃りの充電代は施設のサービスに含まれていた。「充電する分の電気代はかかるか」と確認したところ、「ずっと充電するわけではないのでサービスです」と言ってもらえた。
日用品は施設で用意してもらえるものと、自分で持参するものがある。うちの場合、歯ブラシは施設にお任せし、ティッシュは自分で持っていった。施設で買うと割高になることもあるので、消耗品は持参するほうがいいかもしれない。食事のときに使うエプロンは、大きめのものを2枚用意した。
合計すると月10万円弱
父の場合をまとめると、こうなる。
- 基本費用(第3段階の1):約98,000円
- テレビ電気代(30日):2,100円
- 理容代:2,100円
- お茶代:300円
- 合計:月10万円弱
31日ある月は少し高くなる。これが毎月やってくる。
年金で足りるか、正直に言う
うちは足りていない。私が少し補填している
これを書くのは少し勇気がいるけれど、正直に書く。
父の年金だけでは、月々の費用は賄えていない。私が毎月少し足している。
世帯分離をして、負担限度額認定証を取って、できるだけ費用を抑えた状態でも、まだ足りない。
「特養は安い」と言われることがある。有料老人ホームと比べれば確かに安い。でも「年金だけで全部まかなえる」かどうかは、本人の年金額と施設の費用によって変わってくる。
同じように感じている家族は、きっと多いと思う。
入居前に知らなくて損したこと、3つある
電化製品の持ち込み費用は施設によって違う
電化製品の持ち込み代については、入居前の説明で聞いていた。でも「毎月確実にかかる費用」として頭に入れておくのと、「そういう制度があるらしい」と聞き流すのでは、月々の収支の把握がまったく変わってくる。
「この施設では費用はかかるか?」を入居前に必ず確認してほしい。
部屋には家具を持ち込める
父の部屋には棚がひとつついていたけれど、私たちはテレビ台を持っていった。施設によっては、仏壇やタンスを持ち込んでいる家族もいるようだ。
「施設の部屋には何も置けない」と思っていたけれど、案外自分の生活スタイルに合わせて環境を整えられる。入居前の不安がひとつ解消された瞬間だった。
負担限度額認定証の更新を忘れない
負担限度額認定証は毎年更新が必要だ。
市区町村からお知らせが届くと聞いているので、案内が来たら早めに動くといいと思う。
施設に入れてよかったと思った瞬間が、ひとつある
ベッドが部屋の真ん中に置いてあった
入居のとき、父のベッドを壁にぴったりくっつけて置いた。
父は寝ていることが多い。テレビを見ながら横になるから、ずっと同じ方向を向いている。
しばらくして施設を訪ねたら、ベッドが部屋の真ん中に移動していた。
職員さんが動かしてくれていた。
ずっと同じ方向ばかり見続けないように、頭を向ける方向を変えられるようにと、気にかけてくれていたのだ。
私が気づかなかったことを、毎日そばにいる職員さんが見ていてくれた。
費用のことを調べていると、数字ばかりに目がいく。でも、施設に入れて本当によかったと思う瞬間は、こういうときだ。
特養の費用、「安い」は本当だけど「簡単」ではない
特養の月額費用は、有料老人ホームと比べれば確かに安い。でも「安いから安心」とは少し違う。
世帯分離をして、負担限度額認定証を取得して、電化製品の持ち込みを考えて、年金で足りない分をどうするか考えて——。入居してからも、管理しなければならないことがいくつかある。
それでも、父が安全な環境で毎日を過ごしていることを思えば、「高い」とは感じていない。
「特養に入れたら全部解決」ではないことは、正直に伝えておきたかった。施設を探している方や、入居を間近に控えている方の参考に少しでもなれば嬉しい。
在宅介護の限界と、施設を選ぶまでの葛藤については、「施設に入れたのは逃げだと思っていた。でも、在宅のままだったら、もっと父を傷つけていた。」にも書いています。


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